歯が痛い
歯が痛い

日常生活の中で「歯が痛い」と感じる瞬間は、多くの方にとって身近な経験といえます。痛みの出方は個人差があり、強く突然襲ってくることもあれば、じわじわと持続するケースもありますが、いずれも体からの大切な警告信号です。歯の痛みは軽視せず、早めに対応することで症状の悪化を防ぎ、生活の質や全身の健康を守ることにつながります。
ここでは、歯の痛みの原因や代表的な症状、考えられる病気、そして治療法について解説します。少しでも「気になる」「あてはまるかも」と思った方は、ぜひ早めに受診してください。
歯の痛みの原因は多岐にわたります。代表的なものとしては、虫歯や歯周病、歯の根の炎症(根尖性歯周炎)、歯ぎしりや食いしばりによる負荷、親知らずの炎症、顎関節症、知覚過敏などが挙げられます。
また、風邪や副鼻腔炎(ちくのう症)が原因で歯に関連する痛みを感じることもあり、口腔内の問題に限らず、全身状態や他の病気とも関連している場合があるため注意が必要です。
歯の痛みにはさまざまな現れ方があり、痛みの種類やタイミングによって原因が異なる可能性があります。たとえば、甘いものや冷たい飲み物を口にした際にしみるような痛みがある場合は、知覚過敏や初期の虫歯が考えられます。一方で、何もしなくてもズキズキとした持続的な痛みが続く場合は、歯の神経にまで及ぶ炎症が進行している可能性があります。また、食事中に噛んだときに鋭い痛みを感じたり、歯茎が腫れている、顎のあたりまで痛みが広がるような場合は、歯周病や根の先に炎症があることもあります。痛みの種類や範囲、タイミングを把握することで、診断や治療の手がかりになります。
症状が一時的におさまったとしても、痛みの根本的な原因が解決されていないケースが多く見られます。そのままにしておくと、見えないところで炎症が進行し、やがては抜歯が必要になるほど状態が悪化することもあります。痛みが軽減したからといって安心せず、早めに歯科を受診することが重要です。
これらの症状のいずれかに当てはまる場合は、早めの受診が勧められます。
まず問診と視診を通じて、痛みが出始めた時期や痛みの性質、持続時間、関連する生活習慣などを確認します。そのうえで、レントゲン検査をはじめとする画像診断を実施し、歯や骨、歯根周辺の状態を可視化して原因の特定を行います。
さらに、歯周病が疑われる場合には、歯周ポケットの深さを測定して進行度を評価し、歯髄(神経)の健康状態を調べるために電気歯髄診や冷温テストを用いて反応を確認します。歯を軽く叩いて痛みの有無やその程度を確認する打診検査も行い、炎症や根尖病変の存在を見極めます。
虫歯(う蝕)
歯の表面が細菌によって溶かされていきます。初期は無症状ですが、進行すると冷たいものや甘いものがしみたり、ズキズキするような痛みを感じるようになります。
歯髄炎(しずいえん)
虫歯が神経まで達した状態で、安静時にも激しい痛みが起こりやすく、夜間に悪化する傾向があります。
根尖性歯周炎
(こんせんせいししゅうえん)
歯の神経が死んでしまった後に、根の先に膿がたまり、噛んだときの違和感や痛みが出現します。
歯周病(歯槽膿漏)
歯を支える組織の病気で、進行すると歯茎が腫れたり、膿が出たり、歯がグラつくようになります。
知覚過敏
歯の表面のエナメル質がすり減ることで象牙質が露出し、冷たい・熱いものや甘いものに反応して一過性の鋭い痛みが走ることがあります。
親知らずの炎症(智歯周囲炎)
親知らず周囲の歯茎に炎症が起こることで、腫れや痛み、口が開きづらいといった症状が見られます。
顎関節症
歯そのものではなく、顎の関節や筋肉に問題があり、口の開閉時や咀嚼時に痛みが出たり、耳やこめかみあたりに違和感を覚えることがあります。
副鼻腔炎
特に上顎の奥歯の周囲に違和感や痛みがある場合、隣接する副鼻腔の炎症が原因となっている可能性もあります。
痛みの原因によって治療方法は異なります。以下に代表的な治療法を紹介します。
虫歯治療
虫歯の進行度に応じて、虫歯の部分を削り、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)で修復します。軽度であればフッ素塗布や経過観察で済むこともありますが、進行して神経まで達している場合には、根管治療(根の治療)が必要になります。
根管治療
虫歯や外傷によって歯の神経が炎症や壊死を起こしている場合に行う治療です。細い器具を使って神経を取り除き、歯の内部を丁寧に洗浄・消毒し、薬剤で封鎖して感染の再発を防ぎます。
歯周病治療
歯垢や歯石の除去(スケーリング)、歯根面の清掃(ルートプレーニング)を行い、進行度によっては歯周外科治療(フラップ手術)なども行います。歯周ポケットの改善を図り、炎症のコントロールを目指します。
知覚過敏の処置
フッ素塗布や知覚過敏抑制剤を使用し、象牙細管の開口部を封鎖します。また、生活習慣の見直しや専用の歯磨き粉の使用についても指導を行います。
親知らずの抜歯
埋伏している場合や、隣接歯への影響・炎症が繰り返されるケースでは抜歯が適応になります。事前のレントゲンやCT検査により、抜歯の難易度を把握し、安全性を確保したうえで施術が行われます。
顎関節症の管理
症状に応じてマウスピース(スプリント)療法や理学療法、咀嚼筋のストレッチ・マッサージ、生活指導(姿勢や食習慣の見直し)などを組み合わせて行います。
また、痛みや炎症が強い場合には、必要に応じて抗菌薬や消炎鎮痛薬を短期間処方し、症状の緩和を図ります。急性期の対応をしながら、根本的な原因に対する治療を並行して進めることが大切です。
歯の痛みは、体が発する大切な「異常のサイン」です。気になる痛みをそのまま放置したり、市販の鎮痛薬で一時的にごまかしてしまうと、知らないうちに症状が進行し、結果的に治療が複雑化したり、通院回数が増えてしまう恐れもあります。
歯の痛みは一つの原因だけで起こるものではなく、さまざまな背景が隠れていることが多いのが特徴です。だからこそ、自己判断せず、専門的な診察を受けることが早期の問題解決につながります。
当院では、患者さん一人ひとりの症状やお悩みに寄り添い、丁寧なカウンセリングと明確な説明を重視しています。軽い違和感でも、「ちょっと気になる」と感じたそのときが受診のタイミングです。痛みの程度に関わらず、どんなことでもお気軽にご相談ください。
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